立会いなしでも揉めない賃貸契約書の作り方
賃貸経営において、退去時のトラブルは最も多いポイントの一つです。
特によく起きるトラブルの原因は、
- 忙しくて退去立会いができなかった
- 管理会社に任せきりだった
- 鍵だけ返却して退去が完了していた
といった 「立会いなし退去」 のケースです。
実はこの場合、
契約書・特約の書き方次第でトラブルの発生率は大きく変わります。
この記事では、
退去立会いをしない場合に起こりやすいトラブルと、それを防ぐために契約書に入れておきたい考え方・条文のポイントを、実務目線で解説します。
退去立会いをしないと、なぜ揉めやすいのか?
よくあるトラブルは次のようなものです。
- 「そんな傷、入居中につけていない」
- 「立会いしていないのに請求されるのはおかしい」
- 「原状回復費用の説明を受けていない」
- 「写真だけで判断されるのは納得できない」
つまり問題は、
退去時の状態について“双方の認識が揃っていない”ことです。
立会いをすればその場で説明できますが、
立会いがない場合は、
👉 契約書と記録だけが判断材料 になります。
「立会いなし=NG」ではない
誤解されがちですが、退去立会いをしない=貸主が不利というわけではありません。
実務上も、
- 遠方に住んでいる
- 平日対応が難しい
- 管理会社が一括対応している
といった理由で、
立会いを行わない賃貸契約は珍しくありません。
重要なのは、
👉 立会いをしない前提で、あらかじめ合意を取っているか
この一点です。
トラブルを防ぐための考え方(条文の軸)
立会いをしない場合、契約書・特約では次の3点を明確にしておく必要があります。
① 退去確認方法
- 立会いの有無
- 代替手段(写真・報告書など)
② 原状回復費用の算定方法
- 何を基準に判断するのか
- 誰が確認するのか
③ 借主の同意
- 立会いなしで判断することへの事前承諾
この3点が曖昧だと、退去後にほぼ確実に揉めまてしまいます。
実務で使いやすい「考え方ベースの条文例」
※以下はあくまで考え方の参考例です
※実際に使用する際は、管理会社・専門家にご確認ください。
■ 退去立会いを行わない場合の条文の考え方
本物件の明渡しに際し、貸主または管理会社は、必ずしも借主立会いのもとでの確認を行うものではなく、借主はこれをあらかじめ承諾するものとする。
ポイント👉 「立会いが必須ではない」ことを明記
■ 代替確認方法を明確にする
退去後の室内状況については、管理会社等が行う室内確認、写真・動画等の記録および報告書をもって確認するものとする。
ポイント👉 「誰が」「何をもって」確認するかを明確に
■ 原状回復費用の算定に関する同意
原状回復費用については、上記確認結果および関係法令・ガイドラインを踏まえ、
貸主または管理会社が合理的に算定した金額を基準とする。
ポイント👉 一方的ではなく「合理的」という言葉を入れるのがコツ
➪契約書のどこに入れるべきか?
一般的な賃貸借契約書のひな型(国土交通省の標準契約書など)であれば、以下の項目(条文)の直後に「特約」または「項目の追加」として挿入するのが自然です。
- 第〇条(明け渡し)
- 第〇条(原状回復)
- または、巻末の「特約事項」欄
「明け渡し」の条文内に「第○項」として追加するのが、文脈として最も分かりやすくなります。
条文より大事な「実務対応」
契約書があっても、実務が雑だと意味がありません。
✔ 入居前写真は必須
- 日付入り
- 全室
- 設備も含める
✔ 退去後写真も必須
- 同じアングル
- 汚損部分のアップ
- 一式保存
✔ 見積書・内訳は細かく
- 「一式」は避ける
- 清掃/補修を分ける
こうすることで、借主からのクレーム率を下げることができます。
清掃・原状回復の現場から見た注意点
実際の現場では、
- 張替え不要なのに全面張替え
- 清掃で足りるのに工事扱い
- 説明不足による不信感
がトラブルの火種になります。
「次の入居者に問題なく貸せる状態を作る」という原状回復の本来目的を、
契約・実務の両方で意識することが重要です。
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